中国の科学者が全固体リチウム電池研究で画期的な成果を達成

スマートフォンのバッテリーがより安全で小型であるだけでなく、1回の充電でより長くもつとしたら、どれほど素晴らしいことでしょう。最近、中国科学院青島バイオエネルギー・バイオプロセス技術研究所の研究チームが、全固体リチウム電池の分野で新たな進歩を遂げました。この進歩により、小型で長持ちする電子機器の夢が現実になる可能性があります。この研究結果は、7月31日に国際学術誌「ネイチャー・エネルギー」に掲載されました。

スマートフォン、ノートパソコン、その他の電子機器に電力を供給するリチウムイオン電池は、通常、液体電解質を使用してエネルギーを蓄え、放出します。現在、科学者は新しいタイプの電池、全固体リチウム電池を研究しています。従来の電池とは異なり、これらの電池は液体電解質ではなく固体電解質を使用しているため、より安全で、漏れや発火の可能性が低くなります。

全固体リチウム電池は理想的に思えますが、開発にはいくつかの課題があります。主な問題は、電池の正極内の異なる材料間で完全な化学的および物理的適合性を達成することが難しいことであり、これによりエネルギー密度と寿命に影響を与える可能性のあるさまざまな界面の問題が発生します。これに対処するために、研究チームは新しい材料、均質正極材料（リチウムチタンゲルマニウムリン硫黄セレン、LTGPSSe）を開発しました。

この新しい素材は、従来の素材に比べていくつかの利点があります。

1. 高い導電性：この新材料は、従来の正極材料（層状酸化物正極材料）の1,000倍以上を超える高いイオン導電性と電子導電性を誇ります。つまり、導電性添加剤に頼らなくても、正極が効率的に充放電プロセスを完了できるため、バッテリー全体の性能が大幅に向上します。

2. 高い放電容量: 新素材の放電容量は 250 mAh/g に達し、現在使用されている高ニッケル正極材料を上回ります。これにより、バッテリーは同じ重量または体積でより多くのエネルギーを蓄えることができ、充電間の動作時間が長くなり、よりコンパクトなデバイスを設計できるようになります。

3. 体積変化が少ない: 充電および放電サイクル中、新しい材料の体積変化はわずか 1.2% で、従来の材料 (層状酸化物カソード材料) の 50% よりもはるかに低くなっています。この最小限の体積変化により、構造の安定性が維持され、バッテリーの寿命が延びます。

4. 高エネルギー密度：この新材料を使用した全固体リチウム電池のエネルギー密度は390Wh/kgに達し、現在報告されている長サイクル全固体リチウム電池の1.3倍に相当します。

5. 長寿命: この材料で作られた全固体リチウム電池は、長いサイクル寿命で 10,000 サイクル以上を達成できます。5,000 サイクルの充電後でも、バッテリーは初期容量の 80% を維持し、より長い期間十分な電力を供給します。

この研究は、高エネルギー密度、長寿命のエネルギー貯蔵装置の開発に重要な技術的サポートを提供し、電気自動車、エネルギー貯蔵グリッド、深海および深宇宙機器に安全で耐久性のある電源を提供します。また、新しいエネルギー貯蔵システムの開発にも重要な意味を持ちます。